月と木星

愛のこと、徒然なるままに。

春は電車に乗って

今日花を買ってきた。

玄関に春がきたみたいに明るくなった。


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思い出すのは

 

 

いわゆる鉄オタの人。

 

電車の話をし出すととまらない。

子供みたいにきらきらした目で

少年のような人だった。

その人には好きな人がいた。

 

わたしのことを好きだよって

言いながら、好きな人の話をわたしにする。

いかに好きかをわたしに話す。

その自覚がないのが、罪深い。

 

 

「春になったら桜がきれいな鉄道連れて行くね」

 

まだ夏の盛りに、春の話をしていた。

 

 

 

淡い水色の空と

桜の色と、

菜の花の黄色と、

すこし霞んだ空気を

楽しみにしていた。

 

白いワンピースを着たいな、とか

黄色のイヤリングが可愛いなとか

デートの想像をたくさんした。

 

 

未来の話は、夢がある。

その過程がある。

だけど、どこか掴めなくて不安にもなる。

 

 

 

春が来る前に、その人は

好きな人のところへいってしまった。

 

 

 

もうすぐ、また春がくる。

今年は春が来るのが早くなりそう。

 

約束だけがわたしの中に

残って、見ていない景色を

眩しく想像している。

どんな場所だったのだろう。

 

 

 

電車が春を連れてくる。