月と木星

愛のこと、徒然なるままに。

針金のコサージュ

中学の時に好きだった子は、

サッカー部だった。

ほにゃほにゃしてて、

笑顔までほにゃほにゃだった。

 

夏になるとまっくろになって、

歯だけがぴかっと白かった。

でもやっぱりほにゃほにゃだった。

 

相手に気持ちを伝えることもせずに

進路は別々の道に進んだ。

 

 

大人になって、

ネットの海で再会した。

奇跡だと思った。

 

気持ちを伝えて燃え上がった。

それはそれは苦しいほどに。

 

 

何年も時を経てるのに、

相変わらずほにゃほにゃの笑顔だった。

最高だなって思った。

 

 

仕事でコサージュが必要になった~って

話をすると、彼は趣味でしていた

針金細工というのか、それで、

小さなお花のブローチを作ってくれた。

 

クリスマスにホットカーペットをくれるような

人だった。いつも1番わたしのことを

考えてくれている人だった。

やさしいまなざしと、

ほにゃほにゃの笑顔が

だいすきだった。

 

 

そのブローチをつけて

意気揚々と仕事に向かった。

職場のお姉様が、

「これ付けなさい」て

どこにでもあるような、

お花のコサージュに付け替えられた。

なんで断れなかったんだろう。

なんでこれを付けます!て

いえなかったんだろう。

 

 

気持ちがしょげるのを感じた。

彼のことを何も知らない人に

ぐしゃってされたような気持ちになった。

 

彼は笑ってた。

あのほにゃほにゃの笑顔で。

叱ってよ。責めてよ。

そんなこと言える訳もなく。

 

 

 

恋が終わった。

 

 

今もどこかで、

ほにゃほにゃ笑ってるのかなぁ。

お日様みたいな人だった。

初体験

SNSで、

【○歳で経験ないのってやばいですよね】

っていうのを見かけた。

やばいっていうのは、どこからの視点なのか。

社会一般的にという意味か、

恋愛市場的にという意味か、

人としてという意味か、

それ以外か

 

いずれにしてもどうでもよくない????

と、思ってしまう。

 

そういう機会がそれまでになかったというだけで

何もやばいことはないでしょう???

 

 

その投稿に対して、

「初めては大事にしてください!!」と

コメントがずらずらと並んでいた。

 

 

わたしは、

そんなことを人に聞いてしまうぐらいなら、

さっさと捨てちゃえばいいのにって思う。

外野も無責任なこと言わないで

黙っとけばいいのに。

黙ってないし。

黙っていられないのは

なんで?????って思う。

 

 

夢を見ているのなら

現実を知った方がいい。

 

最初は、すごく痛い。(人によるのかな)

だって、今まで経験したことないんだから。

血も出る人がいるくらいだし。

 

わたしは、おなかに

すりこぎ棒でガツガツされてるみたいやなぁって

思って、なんにも良くなかった。

痛いなぁって。

 

 

 

別にロマンチックでも何でもなかった。

夢ではなく、現実なんだけどな。

 

 

でも、経験する度に

いろんなことを知っていった。

喜びも快楽も。

 

 

 

今では、最初よりもその過程が大事と思うし

なんなら、人生最後の経験を

どうしたいか?の方が重要だなって思う。

 

最後の晩餐は何を食べたい?って

話題があるように。

最後のセックスをどんなふうにしたい?って

考えるのも楽しいのではないか。

 

年齢と共に、欲は変化していく。

女の人の場合、

重ねてくごとに増してくとも言われている。

男の人もテストステロンの関係もあったりするし

 

逆に役割が邪魔をして、

楽しめないこともあるし。

 

 

エネルギー溢れる、

がつがつ貪るようなセックスも

ひたすら相手を感じ尽くすようなセックスも

触れていたいっていう

溢れる気持ちに身体をゆだねて

 

 

ふたりで楽しむものだから。

ひとりずもうは気持ちよくないから。

最近すごく、そんなことを感じる。

与えられるだけではなく、

与える喜びもあるっていうこと。

 

 

あと、日常がすべて前戯だということも。

プロポーズはなかった

この人といたら、

わたしは幸せになる!と思った。

というか、この人以外だと

わたしは幸せになれないと思った。

 

趣味も好きな物も、

好きな本も映画も、

何もかも違う。

なのに、なぜか惹かれる。

強い強い磁石みたいに。

 

 

プロポーズの言葉はなかった。

 

ひょんなことで、よそから

車をもらうことになって、

「一緒に棲むか」

そんな言葉もなかったかもしれない。

同棲が始まった。

 

 

基本的にわたしに甘く、

なんでも「あなたの思うようにしたらいいよ」と

言ってくれる。

 

わたしのへっぽこ具合も受け入れてくれて

愛してくれている。

 

愛されてるなぁと思う。つくづく。

プロポーズはなかったけれど。

 

今年で10年。

若い頃のようにときめきこそ

なくなったけれど

たるんだお腹も

目尻のしわも

薄くなった頭頂部も

ぜんぶぜんぶ愛おしい。

 

プロポーズはなかったけれど。

 

なんで結婚してるんだろう。笑

なんでここにいられるかは

わからないけど、

結婚をして、今も一緒にいる。

可愛い子供たちにも恵まれた。

 

 

プロポーズはなくても

幸せにはなれるんだなって思った。

 

 

プロポーズは通過点でしかない。

そこはゴールじゃない。

 

プロポーズはなかったんだけどね。

春は電車に乗って

今日花を買ってきた。

玄関に春がきたみたいに明るくなった。


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思い出すのは

 

 

いわゆる鉄オタの人。

 

電車の話をし出すととまらない。

子供みたいにきらきらした目で

少年のような人だった。

その人には好きな人がいた。

 

わたしのことを好きだよって

言いながら、好きな人の話をわたしにする。

いかに好きかをわたしに話す。

その自覚がないのが、罪深い。

 

 

「春になったら桜がきれいな鉄道連れて行くね」

 

まだ夏の盛りに、春の話をしていた。

 

 

 

淡い水色の空と

桜の色と、

菜の花の黄色と、

すこし霞んだ空気を

楽しみにしていた。

 

白いワンピースを着たいな、とか

黄色のイヤリングが可愛いなとか

デートの想像をたくさんした。

 

 

未来の話は、夢がある。

その過程がある。

だけど、どこか掴めなくて不安にもなる。

 

 

 

春が来る前に、その人は

好きな人のところへいってしまった。

 

 

 

もうすぐ、また春がくる。

今年は春が来るのが早くなりそう。

 

約束だけがわたしの中に

残って、見ていない景色を

眩しく想像している。

どんな場所だったのだろう。

 

 

 

電車が春を連れてくる。

虹がかかった夜のこと

「夜でも虹がかかるんだって」

 

夢みたいな幻想的な風景を想像した。

 

その日は、夜遅くまで電話をしていた。

電話は好きだ。声で

笑顔が見えてくる。

逆も然りなんだけど。

好きな人の

声を聴いていたくて、

くだらない話を

どこからかひっぱってきて、

あーだこーだしゃべってしまう。

 

 

 

今は電話じゃなくて、

通話っていうことが主流なのかな。

SNSのアプリでもおしゃべりができるように

なってるんだから、すごいなぁと驚く。

 

昔は好きな子の家の電話に

かけて、「〇〇くんいますか?」て

おうちの人に言っていた。

今は家に電話をひいてるところも

少なくなっているのかも。

 

あのドキドキは実は貴重だったのかもしれない。

今では話したい相手にダイレクトに繋がる。

スマホをスッスで繋がる。

便利。便利だけど、あのドキドキは

あれはあれでスリルもあったし、よかったよな?

なんて思ったりもする。もう味わえないかも?と。

 

 

 

 

 

パソコンで夜の虹を調べたら

ハワイの景色が出てきた。

ため息が出るほど素敵だった。

ハワイでは、夜でも虹がかかるんだなぁと

感動した。なんとなく、

デスクトップを撫でた。

 

 

 

数日後の夜中、ふと空を見上げたら

月の周りに虹の環ができていた。

月暈(げつうん)とか、いろんな名前があるらしい

 

思わずあの人に電話をかけた。

 

「虹がかかってる!」

 

あの人は笑いながら

「僕のとこでは見えへんわぁ」

と言った。

 

「けど、同じ月見てんねんな」

 

声がどこか嬉しそうだった。

顔が笑ってたのかもしれない。

電話は、顔は見えないけれど、

でも、やっぱり見える気もする。

 

 

 

月暈を見ると、

いいことが起こるらしい。

こんなロマンチックな時間が

プレゼントされたのだから、間違いない。

 


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電話は、わたしがその人を独占できる時間。

笑いながら話してくれるのが

たまらなく好き。

気持ちと肌とシーツのすきま

その日は、夜約束をしていた。

5時過ぎに「もうすこしがんばるよ」て

連絡が来た。もうすこしって9時か10時くらいかな?

聞かなかったわたしも悪いけど、

いつもの感じかなーって勝手に思ってた。

 

片付けとか、明日の準備とか

することは終わって、

眠いなぁって思いながら待っていた。

 

来たのは0時過ぎ。

ごめんねも、ありがとうもなく、

することだけして、寝ていった。

 

気持ちのすきま、感じなかった?

 

わたしが待ってるのは当たり前なのかなぁって

なんだかすこし悲しくなった。

すやすや寝息をたてている人を見ながら

大事にしてくれてるのは感じてるのに

 

せつないって思った。

だいすきなのに、なんでこんなに苦しいの?

 

お仕事だし、別にそこは責めていない。

がんばってるのは、知ってる

尊敬してるし、応援してる。

何より、一所懸命はセクシーだから。

 

 

こんなにくっついているのに、

すきまがあいてしまった気がして

 

ぎゅうううって抱きしめた。

 

どこにもいかないでって。

ぎゅうううううって。

 

 

寝ぼけながら抱きしめ返してくれる。

 

気持ちと肌のすきまを抱きしめながら眠った。